『ホテルうらうら 汐待ちのとき』 十三 湊 著


私の本棚 180

    出版社:角川文庫

広島県福山市にある鞆の浦は、古くから「風待ちの港」「潮待ちの港」と呼ばれてきた場所。そこにある「ホテルうらうら 汐待ちの宿」を舞台にした連作短編集。

恋人のこと、旧友とのこと、娘のことに悩む女性の宿泊者たち。彼女たちは、ホテルのオーナーである御手洗の占いと、スタッフ女性の倉石からの接客を受けることによって、抱えた荷物を少しだけ降ろせるようになる。

「まだ起こってもいないことで悩まない」
「自分に変えられないことで悩まない」
「もともとちがうものなのだから、わかりあえるはずもない」
「生きていると、人の意思ではどうしようもない流れがあり、決して交わることのない流れもある。たった一度の大きなよい波にも、そのときにはそれを気づけず、乗ることができない。本当に、ままならないことばかりだけれど、そういうものだと今は思っている。波にうまく乗れなかったとしても、それはそれで仕方ない。その失敗を糧に、少しだけ賢くなった自分が、次にやってくる波に乗ればいい」

流されてしまうのと、流れに身を任せるのは違う。肩肘張らず、流れに身を任せるときがあってもいい、と著者は言っているような気がします。