私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『薩摩燃ゆ』安部龍太郎

私の本棚 40


      出版社:小学館文庫
       
      明治維新の中心となった薩摩藩。江戸時代末期の薩摩藩家臣の調所広郷を描いた小説。
      「莫大な借金を抱えた藩財政を立て直し、幕政の改革の先頭に立つ。そして開国を実現し、欧米諸国と対等に渡り合っていける国を築く」という藩主重豪の思いのため、私利私欲を捨て、債券整理や密貿易、贋金作りなどを引き受けて取り組む。
      藩主交代騒動に巻き込まれ、汚名を一身に背負い命を絶つ。

      時代が大きく変わるということは、その裏に多くの犠牲があることも思わされる。しかし、明治維新が成り、日本が近代国家へ歩むことが出来たのは、西郷隆盛や大久保利通の前に、その礎を築いた調所広郷がいたからに他ならない。

『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真

私の本棚 39


      出版社:新潮社
       
      競馬を舞台にした小説。
      サラブレッドは、生産者、馬主、調教師、騎手、ファン、それぞれの「思い」や「夢」や「希望」をのせて走っている。そして、それが「継承」されていくことがテーマとして描かれています。

      主人公の思いが記されているシーンです。
      競馬における一番の魅力は「継承」です。馬の血の、ジョッキーの思いの、そして馬主の夢だけに限らず、調教師も、牧場スタッフも、ファンも競馬にかかわるすべての人たちが、いまこの時代にある「希望」を次の時代へ継承する・・・。


      早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』新潮社刊

『裁判官失格』 高橋隆一

私の本棚 38


      出版社:SB新書
       
      著者は元裁判官。本人の経験から、裁判官が何を考えているのかを記しています。
      ・裁判所が「事実として確定したこと」が事実でないことがあると、私は今でも思っています。
      ・民事事件は、多くの裁判官が「実刑判決にするか、執行猶予付きにするか」で法廷の扉を開ける瞬間まで迷っている。
      ・自衛隊や憲法判断、原発関係などの判決において、最高裁ににらまれるのではないか、政府から攻撃されるのではないか、と考える裁判官は多いことでしょう。それを裁判所が全否定できるかというと、そうとも言えないところがある。

      そのうえで、常に自問自答して、客観的な目で自分を見ること。事件について先入観のない状態で、真っさらな目で見ようとすること。それが裁判官には必要だ、と述べています。

『春、戻る』瀬尾 まいこ

私の本棚 37


      出版社:集英社文庫

      主人公さくらには、岡山で新人教員として勤めたが、挫折をして1年で退職した過去があった。結婚を控えたさくらの前に突然兄と名乗る男が現れる。やがて、その兄という男は、その折の校長先生の息子だと分かる。

      「思い描いたとおりに生きなくたっていい。つらいのなら他の道を進んだっていいんだ。自分が幸せだと感じられることが一番なんだから。」 過去の苦い思い出から解放される主人公の思いが描かれています。

『舟を編む』 三浦しをん

私の本棚 36


      出版社:光文社文庫

      出版社の辞書編集部を舞台にした、辞書「大渡海」が長い年月をかけて完成するまでの小説。
      学者、作成する出版社の主人公や同僚、アルバイトの学生、薄くて軽く、裏写りせず、ぬめり感のあるめくりやすい紙を開発する印刷会社、多くの情熱によって辞書は作られていることが分かります。

      完成した辞書の名「大渡海」には、「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」「海を渡るにふさわしい舟を編む」 という思いが込められています。

『たばこは悪者か? ― ど~する? 受動喫煙対策』 村中洋介

私の本棚 35


      出版社:信山社ブックレット

      区議会でも議論になる喫煙問題。
      著者は、「施設・敷地内」をターゲットとする受動喫煙対策だけでは、結果的に路上などでの受動喫煙を増やすことやマナー違反を助長することになりかねない。行政としても路上喫煙防止対策について積極的な対策を行い、適宜喫煙場所を公共空間に設置することによって、受動喫煙を防ぐ必要がある、と見解を述べています。

『望み』 雫井脩介

私の本棚 34


      出版社:KADOKAWA/角川文庫

      外出から帰宅せず、連絡のとれない高校生の息子。その矢先に息子の友人が殺害された。
      息子が犯人なのか、それとも事件に巻き込まれた被害者なのかが分からない。メディアは息子のことを犯人のように報道し、家族は嫌がらせを受ける日々が続く。
      殺されてしまったとしても無実を信じる父親と、犯人であっても生きていて欲しいと願う母親の姿が描かれています。

      メディア報道のあり方やSNS情報の信憑性についても考えさせられます。

『残業禁止』荒木源

私の本棚 33


      出版社:KADOKAWA/角川文庫

      会社からの残業規制指示により、困難を極めるホテル建設現場を舞台にした小説。
      社員の過労にる発病や自殺未遂、クレーン事故などが起こり、物語は展開していきます。

『「自己肯定感」を高める子育て』 ダニエル J シーゲル / ティナ ペイン ブライソン 著, 桐谷 知未 訳

私の本棚 32


      出版社:大和書房

      自己肯定感を高めるには、「キレない力」「立ち直る力」「自分の心を見る力」「共感する力」の4つの資質が必要だ、と著者は記しています。

      著書では、人間の感情を3つの状態に分けて説明しています。
      人間の感情は、バランスのとれている状態では「グリーン・ゾーン」にあるが、恐れや動揺、怒り、いら立ち、恥ずかしさなどを感じると、急性のストレス反応を起こし抑えがきかなくなっている「レッド・ゾーン」、あるいは心を閉ざして内向きなってしまう「ブルー・ゾーン」に入ってしまう。

      そのうえで、大人が子どもにすることは、キレてしまった時に「グリーン・ゾーン」に戻してやること、成長とともに「グリーン・ゾーン」を広げる手助けをすることだ、と述べています。

『舞台』 西加奈子

私の本棚 31


      出版社:講談社文庫

      ニューヨークに旅行している青年、その自意識過剰な心情を細やかに描いた小説。
      人の目を気にし、自分を演じ、それに息苦しさを感じる主人公の意識を、程度の差こそあれ多くの人が持っているのではないだろうか。

      著者は巻末のなかで、そういった息苦しく生きている人たちに自由になってほしいと同時に、でも「自分を作っててもええやん」ということを書いていて強く思うようになった。そして、状況は自分の気持ち次第で景色が変わる、このことを「舞台」で言いたかった、と述べています。

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