『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』今井むつみ 著
2025年5月22日
- 出版社:日経BP
「人間はわかり合えないもの」であり、相手に「言えば伝わる」「話せばわかる」と私たちが考えていることは幻想に過ぎない。それは、①相手の言葉を理解する際のバックグラウンドにある「スキーマ」(認知、知識や思考の枠組み)がそれぞれ異なり、かつ、②認知能力はあやふやだからである、と著者は述べています。そして、このことを双方が理解しておくことが理想だと記しています。
そもそも、脳はすべてを正しく覚えておくことはできず、忘れるものであり、偏りも生じ、感情によって記憶もねじ曲がってもいきます。また、人間は意思決定の際、最初に感情で物事を判断し、その後、「論理的な理由」を後づけしているに過ぎず、意思決定を「直観」で行っています。
このように、人間は皆「信念バイアス」「認知バイアス」といった何らかのバイアスを持っていることを意識することが必要です。
*信念バイアス:「自分が「こうしよう」というものを、「他人にもそうさせよう」というもの
*認知バイアス:自分の考えや経験、自分の周囲の人の考えや経験という非常に狭いサークルである「自分の小さな世界」を「基準」として世界を見てしまう。
そのうえで、筆者は以下のように訴えています。
私たちは、AIには代替できない、人間にしかない能力を磨くことが求められており、それこそが、生きた知識、直観であり、学びとはこうした能力を磨いていくことだ、ということを忘れてはいけない。