『令和元年の人生ゲーム』 麻布競馬場 著


私の本棚 139

    出版社:文藝春秋

四話で構成されている小説全体の主人公は沼田。彼の大学生時代(平成28年)、入社後(平成31年・令和4年)、退職後(令和5年)を通して、意識高い仲間や同僚たちのなかで生きる、Z世代の人生観や仕事観、結婚観を描いている。

沼田の発言から
〇「他人からの評価に右往左往させられるなんて、この世で一番馬鹿らしいことですから。・・・実際は何もせずにのんびり暮らしているぐらいが、僕の理想なのかもしれないなぁ」
〇「そうやって自分や他人に期待しちゃって、最後の最後に裏切られたりしたら、死にたくなるほどみっともないでしょう? そうなるくらいなら、僕はやっぱり何もしないほうがマシだと思います」
〇「頑張っても必ずしも報われない社会で疲弊するよりも、日々に小さな幸せを見つけたほうがいい」
〇「そもそも、別に結婚願望みたいなものもないですしねぇ。だって、考えてもみてくださいよ。ある時点での自分の判断で、未来永劫自分を縛り続けるだなんて、あまりに馬鹿げていませんかぁ? 人間も身勝手ですよ。僕は少なくとも、他人に期待しないことにしていますから」
〇「人間は価値を生むための装置でもないし、競争で勝つための機械でもないんですよ。君は他人の目を気にしすぎてるんじゃないですか? 僕みたいに下らない人生ゲームから降りてしまって、コースの外でのんびり猫でも撫でているほうが幸せですよ」
〇「脇谷くんは価値ある人間であることに固執しすぎです。やるべきことが見つかるか、それが向こうからやってくるまで、当面はのんびり過ごしましょうよ」

『令和元年の人生ゲーム』 麻布競馬場 著 文藝春秋