『今日も明日も負け犬。』 小田 実里 著


私の本棚 138

    出版社:幻冬舎

起立性調節障害によって中学校に通えなくなった西山夏実。登校する保健室で生気を失った蒔田ひかると出会う。ひかるを笑わせる、という夢に向かい、前に歩き出し奇跡を起こす。症状を抱える夏実の生きづらさや孤独感、自殺手前まで追い込まれる精神状態、家族の辛さが描かれた、実話に基づいた小説。

起立性調節障害(通称OD)*本文より
〇血圧や脈拍に異常が生じる自律神経の病気である。思春期の子供に多く見られる疾患で、全国の中高生のうち約七十万人が発症しており、不登校の三~四割に起立性調節障害の関与が推定されている。しかし、周囲の認知度と理解度が低いため、サボりや怠けと誤解され精神的に追い込まれている人が全国に多数いるのが現状である。
〇「朝起きられない病気」と言われる起立性調節障害の子は朝、血圧が極端に低いため、自分の意志だけでは起き上がることができない。逆に夜にかけて低くなるべき血圧がいつまでも低くならないため目が冴え、元気になり、深夜になっても自分の意志だけでは寝ることができない。また午前中は、めまい、全身の倦怠感、食欲不振、動悸などさまざまな症状が起床と同時に訪れる。重度の場合、思考力、判断力、集中力の低下などの症状も現れる。これらの症状は午後には回復していくため、周囲の人に誤解や間違った認識をされ助けてもらえないケースがほとんどである。
〇現在の日本ではすぐに効く薬や明確な治療法はなく、起立性調節障害の子供は当たり前のことができなくなっていく屈辱と、起床と同時に訪れるさまざまな症状、そして周囲に理解されない現実に毎日苦しんでいる。その苦しみから孤独を感じ、時にはそれが虐めに繋がり、最悪の場合には自殺という形でこの世を去ってしまう若者もいるのである。