『ラブカは静かに弓を持つ』 安壇美緒


私の本棚 73

      出版社: 集英社

    子どもの頃に誘拐未遂されたことから、今も不安を抱えて暮らしている主人公の橘樹。仕事として潜入調査のために通い始めたチェロ音楽教室であったが、先生や生徒と関わることによって、自分の壁を乗り越えようと変化する主人公の心を描いた作品。

    人は、相手やその場に安心を感じたときにはじめて、自分の話をしても大丈夫なんだ、と自己開示が出来る。それが信頼であり、その無数の信頼の重なりの上に、人間関係は構築される、と登場人物の一人が述べています。

    それは、たとえ騙すために接した相手であってもです。ふと、映画「ローマの休日」を思い出しました。