『震える牛』 相場英雄


私の本棚 72

      出版社: 小学館文庫

     
    「食品偽装」「ショッピングセンターばかりになる地方都市」という社会問題を扱った警察小説。
    真面目な現場捜査員対して幹部の狡猾さが、勧善懲悪を期待した読み手の予想を裏切ってくれる。

    「幾度となく、経済的な事由が、国民の健康上の事由に優先された。秘密主義が、情報公開の必要性に優先された。そして政府の役人は、道徳上や倫理上の意味合いではなく、財政上の、あるいは官僚的、政治的な意味合いを最重要視して行動していたようだ」という一文が出てくるが、「理不尽」「不条理」「矛盾」といったものが小説全体のテーマとして描かれています。