『選べなかった命 』 河合香織

私の本棚 8



    出版社:文藝春秋

    何かの事件や出来事があると、私たちは単純明快を求めたがります。しかし、むしろ多くのことはそうではないのだと言えます。100対0で片方に責任があるとは限らないし、さまざまな要因や思いや考えが複雑に絡み合って人は判断しているということを理解したうえで、ニュースを見ていかなければいけないのだと思います。

    (引用)
    ・多種多様な意見や価値観があって、それを強制するのは窮屈です。ダウン症だったら何があっても産むべきだという社会も、中絶すべきだという社会も窮屈です。
    ・どの人が立派だ、どの人は悪い、と誰が決められるものだろうか。その人それぞれの精一杯のところで出した答えは、唯一の答えだ。五年に渡る取材を通して見えてきたことは、安易な中絶も、安易な出産もないということだ。どの人も、崖淵ギリギリのところまで考え抜いて、最後の最後に答えを出していた。そして、その答えは後になってみれば誤りだったと思うことも少なくないだろう。人間は時に間違う存在だ。選んだ道を良かったと思ったり、後悔したり、そうやって七転八倒して私たちはそれでも生きている。