私の本棚
清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。
『関東大震災』 吉村昭
『緑内障の真実』 深作秀春
『22世紀の民主主義』成田悠輔
『レーテーの大河』 斉藤詠一
『人の心に働きかける経済政策』 翁邦雄
『デジタル・ファシズム』 堤未果
『なぜ日本の野党はダメなのか?』 倉山満
- 出版社:光文社新書
政党についての戦前から現在に至る流れと時々の動き、あわせて各党への批判が記されています。
一瞬にして言動が変わるのが自民党政治の真骨頂だと指摘し、過去の言動などなかったことにするのが伝統と化している。しかし、有権者の選択肢がないため、むしろ「自民党を批判しても仕方がない」との風潮にまで至っていると述べています。
そのうえで、「最低でも二つの選択肢がなければ、選挙などやる意味がありません。選択肢が一つしかないということは、一党優位を生みます。そして、その一党は無限大に腐敗します。代わる選択肢がないので、何をやっても与党でいられるからです。健全な批判勢力があるから民主政治です。政権担当可能な野党第一党があるから、与党も油断できない。それでも弛緩するなら、選挙で与党から叩き落とせばいい。」と論じています。
そして最後に、もう「野党がダメだから自民党に入れるしかない」という政治は嫌だと有権者は主張すべきだと、まとめています。
—
「倉山満『なぜ日本の野党はダメなのか?』 / 光文社新書」
『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』椎名 美智
- 出版社: KADOKAWA/角川新書
「させていただきます」を耳にする場面に違和感があります。
議会でも「質問させていただきます」「答弁させていただきます」など多く使われています。
この本は、「入籍させていただきます」「謝罪させていただきます」等の例をあげ、「させていただく」が氾濫しているとまず指摘しています。そのうえで、「させていただく」が使われることに否定的な方が多いのに、なぜこれだけ多く使われているのか、ということを以下のように述べています。
○文化庁の「敬語の指針」によると、「させていただく」の適切な使用条件は、自分以外の許可と自分に恩恵があることと記されています。ところが、「~いたします」「お~する」に敬意漸減(使われているうちに敬語の敬意がすり減っていく)が起こり、使いにくくなってしまった。そのため、本来相手に敬意を向ける謙譲語「させていただきます」は、自分の丁寧さを示す丁重語としていまは使用されています。
○敬語とは、そもそも尊い他者に対して敬意をむけるものでした。しかしいまや、人々は敬意を他者に向ける代わりに謙虚な自分を示すことにひたすら注力をしています。そう考えると、現代日本語の敬語が行き着く先にあるのは、敬意が他者へ向かない敬語、他者を必要としない敬語かもしれません。
○言葉は、それぞれの時代に生きる人々の感覚や距離感に合わせて変化していくものであり、使われれば使われるほど敬意がすり減り変化していくのは仕方のないことです。
敬語自体の変化は、社会と自分との関係、自分と他者との関係の変化を反映したもので、「させていただく」の頻出は、そうした変化の最先端に位置している現象だといえます。
○「させていただく」ブームは、日本語の敬語が敬意漸減のために次々と交代して辿り着いた現在の到着点であり、連綿と続いてきた敬語の歴史的変化の結果といえます。
—–
『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』椎名 美智 KADOKAWA/角川新書