私の本棚
清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。
『自転しながら公転する』 山本文緒 著
- 出版社:新潮文庫
主人公は32歳の独身女性、与野都。恋愛、結婚、友達、職場、セクハラ、親の介護といった問題を抱えている。何かを決められず、時間は過ぎ環境は変わっていく。思い悩みながら生きる30代の女性を描いた小説。
同じような息苦しさを感じている人は多いのではないだろうか。小説の中で登場人物たちが解決へのヒントを述べています。
○「不安じゃない日本人なんていないんじゃねえの」
○「人に助けてって言えなかったけど、言ってもいいんだってさっき思った」
○「運命はないってことは、正解はないってことじゃない。正解はないってことは間違いもない、つまり失敗もない」
○「やりたいことがあれば、話は簡単なのかもしれない。欲望が強い人が羨ましいな。私はあんまりそういうのがなくて」
「それもいいことなんじゃない? 過剰じゃないってことはバランスが取れてるんだし」
○「長く一緒にいれば行き詰まるときもある。でも変化していけばなんとか突破口は見つかるものなのかもしれない。」
○「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。 少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ。」
プロローグとエピローグ、主体が変わる記述などの構成も含め楽しめた一冊でした。
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山本文緒 『自転しながら公転する』(新潮文庫刊)
『安いニッポンからワーホリ!』 上阪徹 著
- 出版社:東洋経済新報社
オーストラリアで暮らすワーホリ利用者へのインタビューによって構成された一冊。
ワーホリの目的も変化してきた。まだ贅沢だった「海外」をモラトリアム的に楽しむ「昭和のワーホリ」は、英語を学ぶための「平成のワーホリ」となり、「令和のワーホリ」は現地から直接SNSで情報が得られるようになり、「稼げる」という状況もある。
ワーホリや留学の価値は、多様性に触れることによって視野を広げ、人生観を変えられる、マインドチェンジが出来るということだ、と登場するワーホリ利用者は述べています。著者も、世界で生き抜く力を身につけておいたほうがいい、その力が「選択肢」をつくり武器になると述べ、「若者よ、今こそ海外に出よう」と訴えています。
ただし、無計画な人たちには厳しく、海外生活の質は英語力で決まるとも指摘しています。
日本が「失われた30年」から立ち直るには、過去の成功体験にとらわれないことであり、そのためには、海外に出て「新しい体験」をした人材が必要だ、そうでなければ日本は変われない、と著者は記しています。
『ルミネッセンス』 窪美澄 著
『i (アイ)』 西加奈子 著
『脂肪のかたまり』 モーパッサン著
『犯罪心理学者は見た 危ない子育て』 出口保行 著
『にげてさがして』 ヨシタケシンスケ著
『激安ニッポン』 谷本真由美 著
- 出版社:マガジンハウス新書
際立って低い成長率、30年間ほとんど伸びていない給与など、日本人は海外の人から見ると信じられないほど低賃金で働いていると指摘しています。そして、日本が世界と比較していかに「安い国」なのかを記しています。
その結果、外国人による不動産売買や所有の禁止事項がほとんどないため、家も土地も買収されていること、サービスも質も高いのに激安で加入条件も緩いため、健康保険制度が海外から狙われていることに警鐘を鳴らしています。
著者は、日本経済が落ち込んでいる要因に「非正規雇用」の増加や、非効率な仕事のあり方を挙げています。日本の現状を見つめ、他国の実態を知ることが必要だと述べています。