私の本棚
清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。
『兎は薄氷に駆ける』 貴志祐介 著
『詭弁社会』 山崎雅弘 著
『日本人という呪縛』 デニス・ウェストフィールド 著
- 出版社:徳間書店
著者は在日オーストラリア人のジャーナリスト。
多様性を認めない日本の社会や集団、世界標準からかけ離れた日本のメディア、自国民を守れない外交、景気低迷を政府の経済失策と見ず、政治の変革を拒んできた国民・・・。
予定調和と現状維持を崩さないように「政治」と「官僚」と「メディア」が変革を頑なに阻んでいる。その結果、国民は社会が受け入れる基準に沿って考えさせられているということに、日本人はまず気付いて欲しいと訴えています。
日本人は意識せずに自分で自分に呪縛を与えていると指摘し、今までの「常識」を疑い、日本人的価値観に縛られていることを見つめ直し、制度やシステムから自由と人間性を取り戻すべきだ、とオーストラリアの例なども示しながら記しています。
『本を守ろうとする猫の話』 夏川草介 著
『まほうの寓話』 戸田智弘 著
『ツミデミック』 一穂ミチ 著
『仕事の辞め方』 鈴木おさむ 著
- 出版社:幻冬舎
今年3月末で放送作家業を引退した著者が伝えたいのは、「自分の人生は自分で決めて動くしかない」「自分で大きく舵を切らないと変わらない」ということ。幸せは年とともに変わっていくし、サイズも形も人によって違う、幸せこそオーダーメイドだということ。
これまでの仕事を通して、今の仕事にワクワクしているのか? バランスを取る立場なって若者を説得していないか(ソフト老害)? 仕事において自分の代わりはいることを自覚しているか? と問うています。
そして、自分の人生・仕事を俯瞰で見ること、人脈は宝であり縁を増やして円にしていくこと、好奇心力を鍛えることが大事だと述べています。
『ジェンダー・クライム』 天童荒太 著
- 出版社:文藝春秋
性犯罪は被害者とその家族、加害者側の家族という多くの人を傷つけ悲しませる。そして、それぞれのその後の人生に大きな影響を与え続けていくことを描いています。
著者は謝辞のなかで、女性や子どもが被害を受ける犯罪やハラスメントを生む要因の一つが、「主人」「奥さん」といった対等ではない関係を裏に秘めた言葉を、無意識に使う文化にあるのではないか、と述べています。
小説のなかでは、主人公の鞍岡刑事が「無意識のうちに、女という性を軽く見ていたからですよ。性犯罪についても、たかがと思う心があったからです。一人の人間の人生を壊し、魂を殺すのも同然の、むごい犯罪が行われたのだという意識があれば、・・・。これは、この国の根っこにある、我々の罪ですよ」と迫っています。
物語は重層的に展開をしていきますが、各所に伏線が記されています。最後の刑事二人のシーンに涙して読み終えました。