私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『ご近所トラブルシューター』 上野 歩 著 


私の本棚 151

    出版社:光文社文庫

事件になる前に近隣のもめごとを解決する(株)近隣トラブルシューター。そこに再就職した元警察官の一絵亮が、若い先輩社員の望月明日香と組んで、騒音やストーカー、ゴミ屋敷といった問題の対応にあたっていく。

『フォールン・ブリッジ 橋渡し不可能な分断社会を生きるために』 御田寺 圭 著


私の本棚 149

    出版社:徳間書店

著者は「私たちは、つながりながら分断する時代に生きている」と指摘し、行き場のない若者や就職氷河期世代、高齢者の実態、資本主義の未来といった18のテーマについて記しています。そして、その実態を知ることによって、分断された間に橋を架けられるのではないかと述べています。

『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』 麻布競馬場 著


私の本棚 149

    出版社:集英社文庫

22作品の短編集。他人よりも優越していたい、という東京への、港区への、いい大学への、タワマンへの憧れ。しかし、その先には何があるのか。結局、この部屋からは東京タワーは永遠に見えないという、主人公たちの孤独と悲愴が描かれている。

著者は作品のなかで「お前はこの東京を自由に駆けているようで、実のところ鞭打たれながら決められたコースを競わされているかわいそうな馬だ」と記しています。

『日本の電機産業はなぜ凋落したのか』 桂幹 著


私の本棚 148

    出版社:集英社新書

著者の父親はシャープ元副社長、自身はTDK社員としてリストラにあう。
そんな親子の実体験から、日本の電機産業が凋落した原因として「五つの大罪」を挙げている。
1) 誤認の罪
2) 慢心の罪
3) 困窮の罪
4) 半端の罪
5) 欠落の罪
そのうえで、議論を避けないこと、ダイバーシティを高めること、エンゲージメントを向上させること等を提言している。

『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』 高橋 真樹 著 


私の本棚 147

    出版社:集英社新書

日本の住宅は、国際的な断熱基準をまったく満たしていない。そのことによる健康被害や、光熱費が高くつくという経済的な損失が生じている。そして、それは環境問題やエネルギー安全保障の面からも大きな損失だ、と著者は指摘しています。
事例や効果、学校等の公共施設における取組みを示したうえで、これからの住宅は断熱等級6以上、気密性能C価1.0以下が必須だと述べています。

『ブルーマリッジ』 カツセマサヒコ 著


私の本棚 146

    出版社:新潮社

テーマは「無自覚な加害」
主人公は同じ会社に勤める二人。大学生時代から付き合っている同棲相手にプロポーズをする雨宮守と、妻から離婚を迫られ、社内ではパワハラで通報される土方剛。人事部の雨宮が営業部の土方を事情聴取する。

雨宮が婚約者にしてきた言動、大学時代に同じサークルの女性に行った仕打ち、土方の妻を全く顧みない生活、部下への指導という名の行為。二人の男性は無自覚に女性を傷つけ、忘却している。

上司である人事部長が雨宮に次のようの言うシーンがあります。
「今思えばあれは相手を傷つける発言だった、と後から気付くものもありますし、今もまだ自覚できない加害も、きっとあると思います。前にも話したと思いますが、そもそも僕はこの国に男性として生まれて、異性愛者である時点で、無自覚なところでたくさんの特権を持って生きているんですよね。それを当たり前のように行使するたび、誰かを傷つけているんじゃないか、と考えれば、もうこの社会で男性として生きることは、それだけで加害性を帯びている、ということとほぼイコールなんじゃないか」

雨宮は婚約者から過去の話をされ、「過去は捨てられない。拭えない。加害の過去がある自分には、その過去を棚に上げてまでして、声高に善や正義を叫ぶ権利もない。それでも、みんなで声を上げていかないと、たぶん男は、この男性中心社会は、変われない」と思いはじめていきます。

『うちの父が運転をやめません』 垣谷 美雨 著


私の本棚 145

    出版社:角川文庫

高齢ドライバーによる事故のニュースを見て、故郷に住む78歳の父親のことが気になった主人公の猪狩雅志。
父親に免許返納を迫るものの反発にあう。両親をはじめ車なしでは生活が難しい田舎の実情、サラリーマン人生のこの先に不安を覚える主人公、農業の道に進みたいと考える高校生息子の息吹。雅志は会社勤めを辞めて両親の暮らす故郷に戻り、移動スーパーの運転手として働きはじめ、そこに暮らす住民のために役立っていることに充実を感じはじめる。

小説の中で息吹は「誰もがいつかは高齢者になることを、みんなが気づくべきだ」と言い、解説では国際政治学者の岩間陽子氏が「リセットすべきは価値観だ。未来像だ。私たちの幸せは何か?どこへ向かって走っているの?一体どんな暮らしがしたいの?と問うべきなのだ」と述べています。

『訂正する力』 東浩紀 著


私の本棚 144

    出版社:朝日新書

「じつは・・・だった」という「訂正する力」は、現状を守りながら変えていく力のことであり、過去との一貫性を主張しながら、実際には過去の解釈を変え、現実に合わせて変化する力だ、と著者は説明しています。そして、ルールを変に解釈する人間が出てきた際にも、この力がないとものごとは続かなくなる、と述べています。

そのうえで、歴史記述についても、過去を訂正しながらゆっくりとまえに進んでいくことが大事だ、と記しています。

また、ゼロかイチか、過去を否定するか肯定するか、リセットするかなにも変えないかの対立の議論になってしまう、日本の風土を変えなければならないとも訴えています。

『発達障害の人の「就労支援」がわかる本』 監修 梅永雄二 / 『大学生の発達障害』 監修 佐々木正美・梅永雄二


私の本棚 143

    出版社:講談社

発達障害は特性であって、正しい理解が不足しているために障害となる。まずは、本人とまわりの人が特性を理解することがなにより大切である。そして、特性による困難を自分の力だけで克服していくことは難しいため、支援を受けることを勧めています。また、発達障害の人の働きづらさは、仕事そのものよりも日常生活や対人関係などから引き起こされている場合が多い、とも述べています。

イラストや図解を使って、就労サポートや企業側のとりくみ方、大学側の対応の仕方などが示されています。

『Z世代化する社会』 舟津 昌平 著


私の本棚 142

    出版社:東洋経済新報社

不満ではなく不安を抱えている、周りに囚われ何をするにも横をみる、怒られることがなくなった・・・。
若者のこうした背景にはオトナの事情があることを、筆者は指摘しています。

そのうえで、これら「イマドキの若者」は時代を反映したものであり、Z世代の異様さは先取りしているのであり、いずれどの世代もそうなっていく、つまり、われわれの生きる社会そのものの写像だ、と述べています。

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