私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『ゼロ打ち』 相場英雄 著


私の本棚 135

    出版社:角川春樹事務所

「ゼロ打ち」とは、選挙の投票が締め切られた二〇時ちょうどでメディアが当選を打つこと。
主人公の新聞記者が、衆議院議員選挙を取材しながら、都議会議員の不審死を追いかけていく。

『「今どきの若者」のリアル』 山田昌弘 編著


私の本棚 134

    出版社:PHP新書

16人の学者たちによる若者論。若者の意識などについてそれぞれ分析をしていますが、山田氏はまえがきのなかで、
「忘れてはならないのは、今若者が置かれている状況は、中高年世代が作りだしたものである。若者が消極的になっているのも、『今の若者の責任ではない』のである。若者に何か問題があったとしても、反省すべきは、私を含んだ中高年であることを肝に銘じなければならない。」と述べていいます。

『「今どきの若者」のリアル』山田 昌弘編著(PHP研究所)

『白熱』 結城信孝 編 


私の本棚 133

    出版社:ハヤカワ文庫

競馬をテーマにした短篇集。厩舎を舞台にした作品や、騎手を主人公にした物語、馬券を中心としたストーリーなど、
戦前から1980年代までに発表された8つの小説が収められています。

『大人の発達障害診療科』 加藤進昌 著


私の本棚 132

    出版社:プレジデント社

〇発達障害は、生まれつき脳の一部の機能に障害があることが原因で発症するものであり「子どものときから抱えている障害」と言える。親の育て方や養育環境、仕事や生活上のストレスが原因で発達障害を発症することはない。いわゆる「心の病」とは全く異なる。

〇2007年から特別支援教育が導入され、2012年文科省調査によると、知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す子ども、すなわち発達障害の傾向が疑われる子どもは6.5%、2022年の調査では8.8%であり、小中学生の80万人に相当する。

〇受診者の半数以上が実際には障害ではない。その背景には、①発達障害の人が増えたというよりも、親や教師の理解が進んだことによって疑いをもつ人が増えたこと ②一方で、社会になじめない人、人とうまくコミュニケーションがとれない人が相当数おり、日々悩んでいるという実態がある。
また、子どもの診察にきた母親が、発達障害の傾向をもっていることに気づくことがあり、母親も生きづらさを感じてきたことが推察される。

〇発達障害の子どもの適切な養育環境、大切なことは二つにつきる。
1 特性を認め、受け入れて、その特性を変えようとしないこと
2 得意なこと、好きなことを見つけ出し、それに没頭できる機会を与え、その能力を伸ばしてあげられるようなサポートをすること
つまり、発達障害の本人を変えるのではなく周りがあわせること、である。社会不適応がなくなれば、発達障害の人が社会参加しやすくなる。

〇昭和医大烏山病院などで取り組んでいる発達障害専門のデイケア・ショートケアプログラムでは、同じ障害や疾患をもつ人同士が対等な関係でコミュニケーションをとり、情報交換をしたり、相談し合ったりすることで、お互いを支え合う援助法「ピアサポート」を行っている。ASDの人にはピアサポートが非常に効果的であり、彼らにとって安心できる「居場所」となっている。

〇高い能力やスキルを発揮できるにもかかわらず、障害者枠で雇用されている場合は非常に低い給与になっている。都合よく利用されてしまってはならず、ASDの人が障害者ではなく納税者として社会で生きることができるようになることを願っている。

〇ASDの代表されるような、でこぼこの激しい人も社会で受け入れ、支援しながら活躍してもらおうという、ダイバーシティ&インクルージョン(多様な人材を受け入れ尊重し、相互に機能している状態)の考え方が広まりつつある。
でこぼこをならそうとするのではなく、得意なこと、本人が好きなことを伸ばそうとする教育は、定型発達の人にとっても望ましいものであり、ASDを含む発達障害の人にとって生きやすい社会は、定型発達の人にとっても生きやすい社会である。

『小説8050』林 真理子 著


私の本棚 131

    出版社:新潮文庫

80代の親が50代の子どもの生活を支えている家族の状態、その背景には、すでに大人になっている子どものひきこもりがある。親は子どものひきこもりを世間に知られないよに暮らし、親が子どもを殺めた事件も発生しています。

中学校のときに不登校になった翔太は、以後7年間ひきこもりになっている。結婚を決めた姉の由依は、その翔太のために結婚が出来ないと両親に訴える。夫婦、親子間に亀裂が生じ家族関係が壊れ始めていく。そんななか、翔太が不登校になった原因が中学校時代のいじめにあると知り、父親が行動を起こしていきます。

林 真理子『小説8050』(新潮文庫刊)

『世帯年収1000万円 -「勝ち組」家庭の残酷な真実 -』 加藤梨里 著


私の本棚 130

    出版社:新潮新書

当事者以外から見れば経済的にゆとりがありそうでも、税と社会保険料の負担増、不動産価格の高騰、物価上昇、教育競争の激化等によって、実はギリギリの生活に悩む隠れた貧困状態に近い家庭は予想以上に多いのではないか、と著者は分析をしています。

そして、子育てと老後のお金を両立する難しさを指摘し、年収1000万円世帯でも老後破綻は決して他人事ではなく、「勝ち組」というイメージはもはや虚像に過ぎない、と述べています。

『マンガで解決 親の認知症とお金が不安です』上大岡トメ 著


私の本棚 129

    出版社:主婦の友社

エピソードや体験談も交えて分かりやすく書かれています。

監修した医師の杉山孝博氏は、認知症は誰にでも起こること、長生きすればそのうち誰もが認知症になる、と述べています。そのうえで、認知症になった人が「安心」という感情を持てるように接することが大事であり、認知症家族がともに生きていくためのコツを次のように記しています。
1) 現在の姿を認める
2) 割り切る
3) 演技を楽しむ
4) 先手を打つ
5) オープンにする

『大人の発達障害 まるごと解決BOOK』 星野仁彦 監修 日東書院刊


私の本棚 128

    出版社:日東書院刊

発達障害は性格や病気ではなく、脳の発達がアンバランスだというハンディキャップです。大人の発達障害は、うつ病などの合併症を引き起こしやすいですが、適切な薬物療法やカウンセリングなどを受ければ、治療は十分に可能です。社会に適応して普通に生活できますし、特性を活かして社会の中で活躍することもできます。それにはまず、発達障害を正確に知ってその特性を理解しておき、周囲の人に協力してもらうことが大事です。

『「発達障害」と間違われる子どもたち』 成田 奈緒子 著


私の本棚 127

    出版社:青春新書

学校等で悩みを抱えるお子さんの多くは発達障害ではなく、診断がつかないのに症状を示している「発達障害もどき」かもしれない、と著者は述べています。

そして、「発達障害もどき」からくる行動であれば、生まれつきの脳の凹凸(発達障害)とは事情が少し違うので、子どもの暮らしを見直すことが必要だと指摘しています。

そのためには、まず親が率先して生活リズムを整えること。子ども自身を否定することなく、行動の変化を促すことが重要であり、しっかり食べて、しっかり寝る、この生活をくり返すこと。また、困ったときは誰かに相談し、危険が迫ればそこから逃げることだと訴えています。

『ルポ 高学歴発達障害』 姫野桂 著


私の本棚 126

    出版社:ちくま新書

高学歴発達障害の方は「そうは言っても、勉強ができるんだから」と、どうしても高い希望を持つ。しかし「大学ではうまくやっていけたが、社会に出た途端に挫折してしまった」というケースが起こりうる。それまで自分を形成していたアイデンティティの構成要素だった学歴が、かえって負い目になり、生きづらさになる。

現状として、高学歴の発達障害の方が持っている才能や能力、積み上げてきた学歴や自負にふさわしい働き方や社会貢献の仕方を医療や福祉が提供できているのか、とも記されています。

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