私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆 著


私の本棚 163

    出版社:集英社新書

「そもそも本が読めない働き方が普通とされている社会って、おかしくない!?」
就職をしたことによって、好きな読書が出来なくなった生活に著者自身が疑問をもち、どうすれば「労働」と「文化」を両立出来るのか、日本の働き方について示しています。

読書とは、自分から遠く離れた文脈に触れること、と定義し、映画「花束みたいな恋をした」の主人公二人の生活を引用しながら、本を読むことは働くことのノイズになる、読書のノイズ性こそが90年代以降の労働と読書の関係であったと指摘しています。

しかし著者は、私たちはノイズ性を完全に除去した情報だけを生きるのは無理だ、と述べています。
だからこそ、働いていても本を読む余裕のある「半身で働く」ことが当たり前の社会をつくろうと提言しています。
日本に溢れている、「全身全霊」を信仰し、「無理して頑張った」を美談とする社会をやめ、仕事に限らず「半身こそ理想」だ、とみんなで声をあげよう、と訴えています。

読後、映画「花束みたいな恋をした」を鑑賞しました。

『人魚ひめ』文:末吉暁子 絵:三谷博美 / 『にんぎょひめ』文:曽野綾子 絵:いわさきちひろ


私の本棚 162

    『人魚ひめ』 出版社:小学館 / 『にんぎょひめ』出版社:偕成社

アンデルセンの童話。「人魚が逃げた」をきっかけに、あらためて読んでみました。
両文筆者も、「残酷な一面」「やや破滅的な、絶望的な姿勢」「悲しい結末」と、アンデルセンやこの本について記しています。しかし同時に、子どもでは理解できない面は大人になって分かればいいし、子どもにもあらゆる姿を見せることは、ゆたかな生き方につながる、とも述べています。

『人魚が逃げた』 青山美智子 著


私の本棚 161

    出版社:PHP研究所

アンデルセンの「人魚姫」を下地に、同じ日に同じ銀座を訪れている5人の視点から構成された作品。
和光や歌舞伎座など現実の場所と、フィクション性を交錯させて描かれている。

人魚姫とこの小説に通ずる一つは、相手の気持ちや考えていることは分からないし、きちんと伝わってはいないし、人は「相手はこう考えている」と勝手に思い込んでいる、ということか。

色々な仕掛けもされていて、読後、もう一度ページを見返したくなる一冊です。

『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策』今井むつみ 著


私の本棚 160

    出版社:日経BP

「人間はわかり合えないもの」であり、相手に「言えば伝わる」「話せばわかる」と私たちが考えていることは幻想に過ぎない。それは、①相手の言葉を理解する際のバックグラウンドにある「スキーマ」(認知、知識や思考の枠組み)がそれぞれ異なり、かつ、②認知能力はあやふやだからである、と著者は述べています。そして、このことを双方が理解しておくことが理想だと記しています。

そもそも、脳はすべてを正しく覚えておくことはできず、忘れるものであり、偏りも生じ、感情によって記憶もねじ曲がってもいきます。また、人間は意思決定の際、最初に感情で物事を判断し、その後、「論理的な理由」を後づけしているに過ぎず、意思決定を「直観」で行っています。

このように、人間は皆「信念バイアス」「認知バイアス」といった何らかのバイアスを持っていることを意識することが必要です。

*信念バイアス:「自分が「こうしよう」というものを、「他人にもそうさせよう」というもの
*認知バイアス:自分の考えや経験、自分の周囲の人の考えや経験という非常に狭いサークルである「自分の小さな世界」を「基準」として世界を見てしまう。

そのうえで、筆者は以下のように訴えています。
私たちは、AIには代替できない、人間にしかない能力を磨くことが求められており、それこそが、生きた知識、直観であり、学びとはこうした能力を磨いていくことだ、ということを忘れてはいけない。

『昨日、若者たちは』 吉田 修一 著


私の本棚 159

    出版社:講談社文庫

四つの短編集。それぞれ香港、上海、ソウル、東京という東アジアの都市を舞台に、オリンピックを遠景にして描かれている。

「挑戦できる人間もいれば、挑戦できない人間もいる」「誰も悪くない。なのに、誰も幸せじゃないのはなぜだ?」「スポーツが教えてくれるのは勝つことじゃない。負けてもいいってことだ」

他者のことへ思いを馳せる自分、先を見通せない自分、答えのない人生に悩みながら前を向いて生きようとしてする若者たちを描いています。

『タワマン理事長 ある電通マンの記録』 竹中信勝 著 


私の本棚 158

    出版社:ワニブックス

あこがれの「タワマン」に住む著者は、輪番制によって理事になり、抽選によって理事長に就任します。その理事長時代に発生したエピソードや修繕積立金値上げへの奮闘が記されています。あとがきで、マンション住民の日常的なコミュニケーションが重要だ、と述べています。

『アトムの心臓 「ディア・ファミリー」23年間の記録』清武英利 著


私の本棚 157

    出版社:文春文庫

映画化もされたノンフィクション作品。生まれながらに治療困難な心臓疾患を抱えた次女の筒井佳美。町工場社長の父 宣政は「人工心臓をつくって娘を助ける」と決意し、医療機器メーカーを立ち上げ、医療研究会に参加し奔走する。佳美とその父母、姉妹の思いと愛と行動を描いた実話の物語。

なお、宣政が興した㈱東海メディカルプロダクツは、国産初のIABPバルーンカテーテルを開発した企業です。

『サラブレッドはどこへ行くのか 「引退馬」から見える日本競馬』 平林健一 著


私の本棚 156

    出版社:NHK出版新書

サラブレッドの一生に関わるさ様々な人たちへの取材をもとにまとめられた一冊。平林氏は、引退馬の問題を扱ったドキュメンタリー映画「今日もどこかで馬は生まれる」を制作している。映画を企画した2017年から7年が経過するなか、「ウマ娘」の影響などもあり引退馬支援への動きを著者は感じている。

引退馬問題に最も責任のあるのはJRAだとし、「競馬を楽しみながら引退馬支援を行える」取組みを求めています。また、メディアには、ポジティブな情報だけでなく引退馬に関する頭数やコストなど、実情の一端を正しく発信してほしい、と述べています。

そのうえで、引退馬の現状に違和感を持つ全ての人に、どんな些細なことでもいいから自分ができることをやってみてほしい、と訴えています。

『黄金旅程』馳星周 著


私の本棚 155

    出版社:集英社

素質を秘めながら本気で走らない一頭のサラブレッド エゴンウレア号。馬産地北海道の日高浦河を舞台に、この一頭に関わる生産者、育成者、装蹄師、馬主たちの、それぞれの思いを描いた小説。また、競馬が抱えている競走馬の引退後の問題にも触れています。なお、エゴンウレア号のモデルはステイゴールド号、小説のタイトル黄金旅程はステイゴールド号の香港表記です。

恋愛や八百長、ヤクザも登場するのですが・・・。

『「指示通り」ができない人たち』 榎本博明 著


私の本棚 154

    出版社:日経プレミアムシリーズ

相手に何かを説明をするときに、人は大きな勘違いをしている、と著者は述べています。それは、相手も同じように知識をもち、論理的に物事を考え、根拠をもって理屈で判断すると思っている点です。

そのうえで、相手からの指示や要望を理解出来るようにするためには、認知能力(知的能力そのもの)、メタ認知能力(振り返る力)、非認知能力(感情や忍耐力など)を高めることが重要だ、と説いています。

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