『けものたちは故郷をめざす』 安部公房


私の本棚 70

      出版社: 岩波文庫

    主人公は満州で生まれ育った日本人の青年。1945年の終戦後、無政府状態となった極寒の荒野を飢えに苦しみ、死と隣り合いながら彷徨、踏み入れたことのない故郷日本を目指します。

    戦争は1945年8月15日に全てが終わったのではないということを実感させられます。また、作者自身も生後から満州で育ったためか、描写は映像を見ているようです。

    精神までも壊され、人が「けもの」となる苛酷な極限状況で、人は何を思い、何を信じ、どう行動するのか。希望が絶望となる最後の場面は予想を超えるものでした。