『ウイルスの意味論』 山内一也


私の本棚 71

      出版社: みすず書房

    ウイルスー生物とともに進化してきた「生命体」でありながら、細胞外では活動しない「物質」。多くは外界では「死ぬ」が条件によっては「復活」もする。

    ウイルスは、人の体内にも存在し、人はウイルスとともに生きている。人からだけでなく、ウイルスの視点からも説明をしている一冊です。以下のようなことが記されています。

    ・20世紀後半から、都市化や人口増加、環境破壊や温暖化、家畜やペット環境が変化したことによって、ウイルスは30億年にわたる生命史上初めての環境激変に直面し、寄生するウイルスも増殖の場を乱された。同時に、ウイルスに新天地へ進出するチャンスを与えた。

    ・天然痘、麻疹ウイルスのような高い伝播力・致死率の病気を起こすウイルスは、生き続けるには未感染の人が必要であり、宿主の生物が高密度に集まっている環境でなければ存続できない。その意味でこれらの病は、都市化や畜産業の発展などへ舵を切った人類の宿痾と言える。今後も毒性の高い病原ウイルスが出現するリスクはさらに高まっていくだろう。

    ・ウイルスのなかには、ヘルペスウイルスのように体内に潜伏しているものもある。これらのウイルスは麻疹ウイルスなどと比べると生存に長けている。増殖して病気を起こすこともあるが、共存をしている。逆に人の健康に寄与している可能性のウイルスもある。

    ・ウイルスに対するDNAワクチンの開発が進んでいる。ウイルスそのものを用いないという長所と、新たなウイルスに対してすぐにワクチン化できるという点は、革新的な技術と言える。