『自転しながら公転する』 山本文緒 著


私の本棚 113

      出版社:新潮文庫

    主人公は32歳の独身女性、与野都。恋愛、結婚、友達、職場、セクハラ、親の介護といった問題を抱えている。何かを決められず、時間は過ぎ環境は変わっていく。思い悩みながら生きる30代の女性を描いた小説。

    同じような息苦しさを感じている人は多いのではないだろうか。小説の中で登場人物たちが解決へのヒントを述べています。
    ○「不安じゃない日本人なんていないんじゃねえの」
    ○「人に助けてって言えなかったけど、言ってもいいんだってさっき思った」
    ○「運命はないってことは、正解はないってことじゃない。正解はないってことは間違いもない、つまり失敗もない」
    ○「やりたいことがあれば、話は簡単なのかもしれない。欲望が強い人が羨ましいな。私はあんまりそういうのがなくて」
    「それもいいことなんじゃない? 過剰じゃないってことはバランスが取れてるんだし」
    ○「長く一緒にいれば行き詰まるときもある。でも変化していけばなんとか突破口は見つかるものなのかもしれない。」
    ○「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ。幸せにならなきゃって思い詰めると、ちょっとの不幸が許せなくなる。 少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ。」

    プロローグとエピローグ、主体が変わる記述などの構成も含め楽しめた一冊でした。
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    山本文緒 『自転しながら公転する』(新潮文庫刊)