『ジェンダー・クライム』 天童荒太 著


私の本棚 115

      出版社:文藝春秋

    性犯罪は被害者とその家族、加害者側の家族という多くの人を傷つけ悲しませる。そして、それぞれのその後の人生に大きな影響を与え続けていくことを描いています。

    著者は謝辞のなかで、女性や子どもが被害を受ける犯罪やハラスメントを生む要因の一つが、「主人」「奥さん」といった対等ではない関係を裏に秘めた言葉を、無意識に使う文化にあるのではないか、と述べています。
    小説のなかでは、主人公の鞍岡刑事が「無意識のうちに、女という性を軽く見ていたからですよ。性犯罪についても、たかがと思う心があったからです。一人の人間の人生を壊し、魂を殺すのも同然の、むごい犯罪が行われたのだという意識があれば、・・・。これは、この国の根っこにある、我々の罪ですよ」と迫っています。

    物語は重層的に展開をしていきますが、各所に伏線が記されています。最後の刑事二人のシーンに涙して読み終えました。