私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『昭和16年夏の敗戦』 猪瀬直樹


私の本棚 55

      出版社:中公文庫

    昭和16年 日米開戦の8か月前、各役所や民間から30歳代エリートが召集され「総力戦研究所」が発足した。彼らは模擬内閣を組織し、その年の夏、「日本必敗」という数字によって導いた結論を近衛内閣に説明をしていた。

    筆者は、開戦に至った制度上の原因や、経過についても記しています。
    そのなかで、9月には「開戦」は決まっていたが、その判断を全員一致とするためのつじつま合わせとして数字が使われたことを例に、数字の客観性というものは、結局は人間の主観から生じる、と述べています。

    また、誰がどのように意思決定したのかを文書として記録しておくこと、歴史から教訓を導くという考え方が、当時も、そして今も日本は軽視されている、と新型コロナ感染症対応についても触れて指摘しています。
    歴史認識などという言葉をふりかざす前に、記録する意思こそ問われねばならない、と強く訴えています。

『昭和の名騎手』 江面弘也


私の本棚 54


      出版社:三賢社

    騎手30人のエピソードが記されています。

    競馬のレベルも騎乗技術も現在の方が断然上であるとしたうえで、昭和の「名手」「闘将」「剛腕」「鉄人」といった個性ある騎手が見せるレースには、スリルや驚きがあった、と著者は述べています。

『友罪』 薬丸 岳


私の本棚 53


      出版社:集英社文庫

    会社の同僚に対し、少年のころ連続児童殺傷事件を犯した殺人者ではないかと疑念を抱く主人公。
    登場人物はそれぞれ隠したい過去を背負って生きています。

    友達が少年殺人犯であったことを知ったとき、どう感じて何を考え、どう接して対応しようとするのかを描いています。

『スマホを捨てたい子どもたち 野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』山極寿一


私の本棚 51


      出版社:ポプラ新書

    スマホによって生活は便利にり、世界中の人とも連絡をとることが出来る。
    しかし、本当にプラスの面だけなのか、と著者は述べています。

    人間が信頼関係を保てるのは150人が限度であることや、スマホの世界が第一になってしまうこと、また、文字≠対話のため、文字による連絡は誤解を生みやすいことなどを指摘しています。さらに、仲間へ過剰に求めるがゆえに起きている不幸な事件も多いことも挙げています。

    そのうえで、生の世界を直観力で切り抜ける能力(必ずしも正解を導き出す必要はなく、不正解でなければいいということ)を鍛えることが大事であるとし、そのためには現実の世界と身体を使ったリアルな付き合いをする必要があると記しています。そして、仲間と一緒に過ごすことが人間の幸福につながることは、新型コロナウイルス感染症が過ぎ去ったあとも変わらないと結んでます。

    引用元
    =================
    『スマホを捨てたい子どもたち 
     野生に学ぶ「未知の時代」の生き方』(ポプラ社刊)
     著/山極 寿一 
    =================

『女子校礼讃』辛酸なめ子


私の本棚 52


      出版社:中公新書ラクレ

    著者は女子校(女子学院)出身者。
    学校や生徒への取材等による女子校の慣習や生徒の実情が、学生の時の思い出とともに、率直な感想とユニークな視点で記されています。御三家や大学付属など含め20校以上が登場し、文化祭や学校説明会だけでは分からない各校のカラーも知ることができます。

    私も男子校で楽しい中高6年間を過ごしました。今でも良かったと思っています。
    著者が自身のエピソードとして早弁をあげています。「今思えば、あえて授業中に食べる必要性はどこにもなかったです。ただスリルを楽しみたかったのだと思います・・・。」
    ・・・分かる気がします。

    別学、共学それぞれ良さがありますが、著者が述べている「あの6年間が生命力の源泉になっているように思います。」は、男子校で育った私も同じ思いです。

『首都感染』 高嶋哲夫


私の本棚 50


      出版社:講談社

    中国で致死率60%の強毒性新型インフルエンザウイルスが出現し、世界中の人々が感染されていく話。
    日本は、海外との往来を禁止し、感染者がすでに発見された東京の環八内側を完全閉鎖する。環八以外では感染者は発見されないが、その内側では多くの感染者と死者で溢れる。
    しかし、世界からはこの対応に称賛の声が上がる。

    10年前に執筆された作品ですが、政治の役割、非常時の対応、医師や関係者の状況、国民の感情などが描かれています。

『ペスト』 カミュ / 『100分 de 名著 ペスト』アルベール・カミュ


私の本棚 49


      出版社:新潮文庫 / NHK出版

    原因不明の病気ペストが発生し、外部との遮断されたオラン市のなかで起きていることを記録のように描いていく。そこには、各登場人物それぞれの、その状況下での感情や行動の変化が示されている。
    難しい作品です。

『マンガでわかる 日本経済入門』 中野 剛志

私の本棚 48


      出版社:講談社
       
      アベノミクスが成功しなかったのは、財政支出を抑制し、デフレ脱却とは反対の政策を続けていたから、と指摘。必要なことは、財政出動を進め、賃金上昇を経済の推進力としていく「アメ型(賃金主導型)」の成長戦略を実施していくことだと述べています。

『キャプテンマークと銭湯と』 佐藤いつ子

私の本棚 47


    出版社:KADOKAWA
     
     地域のクラブサッカーチームに所属する中学生の話。お山の大将を気取って「オレ様」プレーでキャプテンをはずされた主人公の周斗。強豪チームから新たに加入した新しいキャプテンの大地。
    いら立ちを抱えた主人公は、生前の祖父と行った銭湯を見つける。そこでの出会いを通して、大地に対しての敗北感から主人公も少しずつ成長していく。

     主人公は、努力を続ける若い左官職人の比呂と銭湯で知り合います。その、比呂のことばを記しておきます。
    「ポジティブな言葉で考えたり言ったりする癖をつけると、必ず物事がポジティブに回り出すんだよ」
    「自分の中のてっぺんを目指す。自分が出来ることの最高っていうのかな。そう、自己ベストだな。自分のてっぺんを目指すし、そのてっぺんを可能な限り、もっともっと上げていくってことだ。」


    『キャプテンマークと銭湯と』作:佐藤 いつ子、絵:佐藤 真紀子 KADOKAWA

『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ

私の本棚 46


      出版社:文春文庫
       
      2019年の本屋大賞受賞作。
      親の離婚や再婚によって、何人もの血の繋がらない親と暮らす主人公の優子。
      どの親にも愛情を注がれて育ち、やがて結婚を迎える。

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