私の本棚
清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。
『薩摩燃ゆ』安部龍太郎
- 出版社:小学館文庫
明治維新の中心となった薩摩藩。江戸時代末期の薩摩藩家臣の調所広郷を描いた小説。
「莫大な借金を抱えた藩財政を立て直し、幕政の改革の先頭に立つ。そして開国を実現し、欧米諸国と対等に渡り合っていける国を築く」という藩主重豪の思いのため、私利私欲を捨て、債券整理や密貿易、贋金作りなどを引き受けて取り組む。
藩主交代騒動に巻き込まれ、汚名を一身に背負い命を絶つ。
時代が大きく変わるということは、その裏に多くの犠牲があることも思わされる。しかし、明治維新が成り、日本が近代国家へ歩むことが出来たのは、西郷隆盛や大久保利通の前に、その礎を築いた調所広郷がいたからに他ならない。
『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真
『裁判官失格』 高橋隆一
- 出版社:SB新書
著者は元裁判官。本人の経験から、裁判官が何を考えているのかを記しています。
・裁判所が「事実として確定したこと」が事実でないことがあると、私は今でも思っています。
・民事事件は、多くの裁判官が「実刑判決にするか、執行猶予付きにするか」で法廷の扉を開ける瞬間まで迷っている。
・自衛隊や憲法判断、原発関係などの判決において、最高裁ににらまれるのではないか、政府から攻撃されるのではないか、と考える裁判官は多いことでしょう。それを裁判所が全否定できるかというと、そうとも言えないところがある。
そのうえで、常に自問自答して、客観的な目で自分を見ること。事件について先入観のない状態で、真っさらな目で見ようとすること。それが裁判官には必要だ、と述べています。
『春、戻る』瀬尾 まいこ
『舟を編む』 三浦しをん
- 出版社:光文社文庫
出版社の辞書編集部を舞台にした、辞書「大渡海」が長い年月をかけて完成するまでの小説。
学者、作成する出版社の主人公や同僚、アルバイトの学生、薄くて軽く、裏写りせず、ぬめり感のあるめくりやすい紙を開発する印刷会社、多くの情熱によって辞書は作られていることが分かります。
完成した辞書の名「大渡海」には、「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」「海を渡るにふさわしい舟を編む」 という思いが込められています。
『たばこは悪者か? ― ど~する? 受動喫煙対策』 村中洋介
『望み』 雫井脩介
『残業禁止』荒木源
『「自己肯定感」を高める子育て』 ダニエル J シーゲル / ティナ ペイン ブライソン 著, 桐谷 知未 訳
- 出版社:大和書房
自己肯定感を高めるには、「キレない力」「立ち直る力」「自分の心を見る力」「共感する力」の4つの資質が必要だ、と著者は記しています。
著書では、人間の感情を3つの状態に分けて説明しています。
人間の感情は、バランスのとれている状態では「グリーン・ゾーン」にあるが、恐れや動揺、怒り、いら立ち、恥ずかしさなどを感じると、急性のストレス反応を起こし抑えがきかなくなっている「レッド・ゾーン」、あるいは心を閉ざして内向きなってしまう「ブルー・ゾーン」に入ってしまう。
そのうえで、大人が子どもにすることは、キレてしまった時に「グリーン・ゾーン」に戻してやること、成長とともに「グリーン・ゾーン」を広げる手助けをすることだ、と述べています。