私の本棚
清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。
『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ 』こまつ あやこ
- 出版社:講談社
娘(小6)の夏休みの宿題、「親子読書」の一冊に読みました。
主人公は中学2年生の花岡沙弥、マレーシアからの帰国子女。クラスに溶け込もうと、人とちがうことを怖がって、周りにどう見られるかばかり気にしている。ある日、転校生の佐藤先輩から誘われ、一緒に短歌を詠むことになる。これをきっかけに、多民族国家マレーシアでの暮らしを思い出し、ちがいに対して自分を曲げて合わせるのではなく、自分が素直に生きられる居場所をみつける沙弥の気持ちが描かれている。
佐藤先輩、主人公の気持ちが以下のように表現されています。
「歌会に行ったら、いろんな人に会えるの。教室だけがすべてじゃないって思える。私はそれに救われたの。」「教室でたまたま毎日一緒に過ごすことになった同い年の人とうまくいかなくても、それがわたしのすべてじゃない、落ち込むことはないんだって思えたの。」「ほんの少しでも私自身を見てくれる人がいてくれればそれでいい。それ以外の人に、どう思われるかを気にしすぎていた。」
『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』 鴻上 尚史
『論理的思考力を鍛える33の思考実験』北村良子
『薩摩燃ゆ』安部龍太郎
- 出版社:小学館文庫
明治維新の中心となった薩摩藩。江戸時代末期の薩摩藩家臣の調所広郷を描いた小説。
「莫大な借金を抱えた藩財政を立て直し、幕政の改革の先頭に立つ。そして開国を実現し、欧米諸国と対等に渡り合っていける国を築く」という藩主重豪の思いのため、私利私欲を捨て、債券整理や密貿易、贋金作りなどを引き受けて取り組む。
藩主交代騒動に巻き込まれ、汚名を一身に背負い命を絶つ。
時代が大きく変わるということは、その裏に多くの犠牲があることも思わされる。しかし、明治維新が成り、日本が近代国家へ歩むことが出来たのは、西郷隆盛や大久保利通の前に、その礎を築いた調所広郷がいたからに他ならない。
『ザ・ロイヤルファミリー』早見和真
『裁判官失格』 高橋隆一
- 出版社:SB新書
著者は元裁判官。本人の経験から、裁判官が何を考えているのかを記しています。
・裁判所が「事実として確定したこと」が事実でないことがあると、私は今でも思っています。
・民事事件は、多くの裁判官が「実刑判決にするか、執行猶予付きにするか」で法廷の扉を開ける瞬間まで迷っている。
・自衛隊や憲法判断、原発関係などの判決において、最高裁ににらまれるのではないか、政府から攻撃されるのではないか、と考える裁判官は多いことでしょう。それを裁判所が全否定できるかというと、そうとも言えないところがある。
そのうえで、常に自問自答して、客観的な目で自分を見ること。事件について先入観のない状態で、真っさらな目で見ようとすること。それが裁判官には必要だ、と述べています。
『春、戻る』瀬尾 まいこ
『舟を編む』 三浦しをん
- 出版社:光文社文庫
出版社の辞書編集部を舞台にした、辞書「大渡海」が長い年月をかけて完成するまでの小説。
学者、作成する出版社の主人公や同僚、アルバイトの学生、薄くて軽く、裏写りせず、ぬめり感のあるめくりやすい紙を開発する印刷会社、多くの情熱によって辞書は作られていることが分かります。
完成した辞書の名「大渡海」には、「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」「海を渡るにふさわしい舟を編む」 という思いが込められています。