私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『文化の居場所のつくり方 久留米シティプラザからの地方創生』久留米シティプラザ編集委員会 編集 槻橋 修 監修


私の本棚 65

      出版社: 誠文堂新光社

    久留米市の再開発事業によって2016年4月に建てられた久留米シティプラザ。3つのホールや広場、店舗などを含む複合施設となっています。この再開発に関係した方々のインタビューが掲載され、市や文化への熱い思いが伝わってきます。市の直営方式によって運営されています。

    *その後のニュースなどを拝見すると、運営費の赤字やテナントの空き店舗の課題もあるようです。

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 加藤 陽子 著


私の本棚 64

      出版社:朝日出版社

    高校生に行った近現代史の講義をまとめた一冊。教科書だけでは分からない、その時その時に各国及び各人はどう考えていたのかを教えています。

    アメリカ人歴史家 アーネスト・メイの主張3点を紹介しています。
    (1) 外交政策形成者は、歴史が教えたり予告したりしていると自ら信じているものの影響をよく受ける。
    (2) 外交政策形成者は、通常歴史を誤用する。
    (3) 外交政策形成者は、そのつもりになれば、歴史を選択して用いることができる。

    そのうえで著者は、人々は重要な決定をするときに、自ら知っている範囲の過去の出来事を、自らが解釈した範囲で、今回の問題と一致しているか見つけ出す作業をしている。よって、結果的に正しい決定を下せる可能性が高い人というのは、広い範囲の過去の出来事が、真実に近い解釈に関連づけられて、より多く頭に入っている人だ、と述べています。

    「おわりに」では「類推され想起され対比される歴史的な事例が、若い人の頭や心にどれだけ豊かに蓄積されファイリングされているかどうかが決定的に大事なことだ」と結んでいます。

『街路樹は問いかける』藤井 英二郎 著、海老澤 清也 著、當内 匡 著、水眞 洋子 著


私の本棚 63

      出版社:岩波ブックレット

    猛暑やヒートアイランド対策として街路樹の役割を見直し、高木の茂った枝葉に覆われた部分の面積割合「樹冠被覆率」を高めていくことが提言されています。
    国内外の取り組みを紹介しながら、街路樹を都市インフラと位置付け、管理する技術の継承と体制の構築が必要だとしています。

『孤独は社会問題』多賀幹子


私の本棚 62

      出版社:光文社新書

    孤独担当大臣を設けているイギリスにおいて、孤独対策に取り組んでいる団体・企業の具体事例が紹介されています。後半は英王室やイギリスの文化・社会について記載されています。

『「さみしさ」の力 ─孤独と自立の心理学』 榎本 博明


私の本棚 61

      出版社:ちくまプリマー新書

    現代は、自立のために必要な「さみしさ」の足りない時代ではないか。今の人たちは誰かとつながっていないと不安。が、つながっていても物足りない。結局ますます一人でいられずSNSが逃げ場となる。しかし、SNSでのメッセージや情報に反応する受け身の過ごし方では自分を見失う、と著者は現状を認識し指摘しています。

    そのうえで、「さみしさ」を感じて一人になって自分と向き合い、自分の中に沈潜しなければ心の声は聞こえてこない、一人の時間だからこそ思考も深まり、見えてくるものがある、と述べています。

    刺激を絶ちあえて退屈な状況を生みだすことや、一人で行動できるというのはかっこいいことなのだ、という意識改革が必要だとも記しています。

『白い航跡(上)・(下)』 吉村昭 


私の本棚 60

      出版社:講談社文庫

    東京慈恵会医科大学病院創立者 高木兼寛の伝記小説。
    薩摩藩軍医として戊辰戦争に従軍した主人公は、先進的な西洋医学を目の当たりにする。明治時代になると海軍に入り、イギリスへ留学し医療を学ぶ。

    帰国した当時、海軍・陸軍は軍人が脚気によって病死するという大きな問題を抱えていた。高木は、脚気の原因は食べ物にあるとする「食物原因説」を唱える。海外では賛同を得、評価を受けるものの、ドイツ医学を基軸とする陸軍、その軍医の森鴎外は細菌説を主張し、日本ではこちらが主流派となる。

    日清・日露戦争にて、海軍では高木の提唱した食料対策によって脚気はなくなったが、陸軍で亡くなった軍人は、戦死ではなく脚気による病死がほとんどであった。

    正しい説が日本では受け入れられないことに対する高木の悶々とした気持ちも記されています。

『小麦100コロス』ゆきた志旗 


私の本棚 59

      出版社:集英社オレンジ文庫

    大手マンション管理会社を退職して独立した若手マンション管理士が、管理組合からの顧問契約獲得を目指して活動する話。文庫の帯にも「マンションは、買って終わりではない。」と書かれているように、マンションが抱える問題は、今後社会問題の一つになる可能性を議会でも指摘をしてきました。

    小説のなかで登場人物が以下のように述べています。
    「マンションは会社とは違う、人の住むところだから、何でも法律では割り切れない」
    「管理組合というコミュニティにおいて何よりも大切なものは、良好な人間関係です」
    「マンションは人が住むところ。人には情というものがある」

『迷惑行為はなぜなくならないのか?』北折充隆


私の本棚 57

      出版社:光文社新書

    そもそも「迷惑行為」かどうかは、行為そのものではなく、他者が不快に思うかどうか、という心理的要因による。そしてそれは、時代や、視点・見方、集団によって変わってしまう、流動的であやふやなものだと述べています。

    また、ルールを守らないのは一部の人であり、多くの人はルールをきちんと守っていること、あわせて、社会全体が不寛容になりすぎている点にも触れています。

    著者は、放置自転車などの事例を挙げながら、迷惑行為の根源は「面倒だ」という意識に行く着くとし、迷惑行為はなくならない、と締めくくっています。そのうえで、だからこそ、感情的にならず、一面的な見方をせず、客観的に考え、お互いのことを慮り、落としどころを探ることが必要だと訴えています。

    新型コロナ感染症も拡大が続いているいま、一人ひとりが、医療従事者や社会全体に思いを馳せた行動をとることが求められているのだと考えます。

『岩波文庫的 月の満ち欠け』 佐藤 正午


私の本棚 56

      出版社:岩波書店

    神様は人間に二種類の死に方を選ばせた。樹木のように、自分は死んでも子孫を残す道。もう一つは月が満ちて欠けるように、死んでも何回も生まれ変わる道。

    一人の男性を思い続ける輪廻転生の恋愛作品。直木賞受賞作。

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