私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち1~5』 宮口幸治著 佐々木昭后作画


私の本棚 97


出版社:扶桑社
宮口幸治氏は「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)の著者。

知的障害まではいかないものの、一定の支援が必要な「境界知能」に該当する人たちは人口の約14%いるとされています。勉強や運動、コミュニケーションが苦手、やる気がない、さぼっているという誤解を受けています。また、感情面や行動面で何らかしらの課題があるものの、原因や状態がわかりにくい「グレーゾーン」の人たち。

この子たちの出すサインは気づかれにくく、「厄介な子」「不真面目な子」として捉えられることも多々あるため、そういったサインを見逃さず、いかにキャッチして支援していくかを目的に、本書は執筆されています。

支援してあげたのだから期待に応えて当然、期待を裏切る奴は許せない、というのは支援者のエゴであり、頑張れない少年だからこそ、期待を裏切る少年だからこそ、逆に支援がいるのだと訴えています。

この漫画について著者は、自著「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)が正しく理解されていない声があることに文章の限界を感じ、漫画化により、明らかに文章よりわかりやすく、楽しく意図を的確に伝えてもらえていると述べ、教育系の一般書については「これから漫画が主流になるかもしれない」とも記しています。

『先生がいなくなる』内田良、小室淑恵、田川拓麿、西村祐二 著


私の本棚 96

      出版社:PHP新書

    執筆者が、それぞれの立場から教師の多忙解消を求め、その根本的理由とされ、「定額働かせ放題」とも揶揄される「給特法」について述べています。
    教員の長時間労働問題は、子どもたちのためにこそ即刻改善しなければならない、と訴えています。

    『先生がいなくなる』内田良、小室淑恵、田川拓麿、西村祐二 著(PHP新書)

『折れない心』 橋下徹 著


私の本棚 95

      出版社:PHP新書

    著者は、現代人は人間関係にとらわれすぎている、と認識しています。
    そのうえで、まず、自分と他人が異なることの「ズレ」をむしろ積極的に受け入れること。そして、その「ズレ」を契機として、自分の意見である「持論」を構築して語り、「自分の軸」「個性」を見出すことが必要だと述べています。

    『折れない心』橋下徹著(PHP新書)

『ひきこもりの真実』 林恭子 著 


私の本棚 94

      出版社:ちくま新書

    高校生で不登校になり、その後、ひきこもりで過ごした著者は、現在、ひきこもりの支援に取り組んでいます。自らの経験も踏まえ以下のように記しています。

    就労や自立は大事だが、まずは「居場所」が必要である。そこで自己肯定感を回復し、自分なりに生きていってみようと思うことのほうが先だ。

    「ひきこもり」は「生きるための手段」であり「生きるための撤退」である。
    そもそも、この社会(学校)は出て行って楽しいと思えるような社会(学校)になっているのか。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、問題があるのは本人ではなく、社会(学校)のほうかもしれない、という視点が必要であり、その人が、その人のままでも生きられる社会を作っていくことが大切だ。

    誰でもひきこもる可能性はある。そのときに充分休め、必要なときに助けを求められるような社会であって欲しい。それはひきこもりだけでなく、すべての人にとって生きやすい社会ではないだろうか。

『8050問題』 黒川祥子 著


私の本棚 93

      出版社:集英社

    ひきこもり状態にある人は146万人と推計されています。
    「8050問題」とは、80代の親が50代のひきこもりの子どもを抱えている家族のこと。「7040問題」とも言われます。

    このノンフィクションは、その状況にある7家族の事例を紹介したうえで、解決に向けて次のように著者は記しています。

    ・ひきこもりのほとんどは、親との関係から生じる。そして、子どものひきこもりを社会からひた隠すことによって長期化させる。親は恥を捨て、外部にSOSを出し、家という座敷牢から子どもを解放して欲しい。
    ・地域に「居場所」を作ること、まずは日中過ごせる場所である「依存先」を増やすこと。

    そのうえで、彼・彼女たちに社会に合わせることを求めるのではなく、彼・彼女らを認め、受け入れられるよう、私たちのほうが変わっていくという視点こそ何よりも重要だ、と訴えています。

『孤独のチカラ』 齋藤孝 著


私の本棚 92

      出版社:新潮文庫

    ひとりの時間とは、自分を鍛える時間であり、人は孤独なときにこそ力を伸ばすことができる。だからこそ、孤独に対してポジティブでクリエイティブなイメージを描き、若いうちは孤独な時間を積極的につくり、孤独になる癖、充実感を持つ単独者であれ、と訴えています。

    そして、その孤独に一筋の光を投げかけてくれるのが、先人たちの言葉だと指摘をしています。そのためには読書をすることが大事であり、それが身についていれば、孤独に押しつぶされることは決してない、と述べています。

    齋藤孝 『孤独のチカラ』(新潮文庫刊)

『100分de名著 ル・ボン 群集心理』 武田砂鉄 著


私の本棚 91

      出版社:NHKテキスト

    ル・ボンは、(1)感情や観念が同一の方向に向かう (2)意識的な個性が消えうせる という特定の心理作用を起こした人々の集団を「群衆」と呼んでいます。

    その「群衆」は、分かりやすくインパクトの強いドグマ、心象によって物事を考えるため、為政者は断言と反覆と感染によって考える力を奪っていきます。

    群衆にならないためには、(1)経験や知恵を堅持し、それをつねに頭に置いておくこと (2)自分で考えることを愚直に貫くこと (3)物事を鵜呑みにしないこと、疑う視点を持ち続けること、人と違う意見をもつことを怖がらないこと (4)「自分」という主体を強く意識し、「自動人形」になっていないか自問すること (5)安易に「わかったつもり」にならないよう、自分の知らないことに自覚的であること が重要だとしています。

『公文書に載らない 東京都政と杉並区政』 田中良 


私の本棚 90

      出版社:都政新報社

    著者は元都議会議長・前杉並区長。都議会議長時代に関わった国立競技場建替えや築地市場移転の問題、杉並区長時代の新型コロナ対応、都外の特養開設といった具体事例を多く取り上げ、どういった協議が行われたのか、その経緯が記されています。

    また、少子化対策といった政策に対する意見だけではなく、政治家、首長としてのあるべき姿、考え方を明解に示しています。地方議会に身を置く者の一人として、大変勉強になった一冊です。

日本の死角 現代ビジネス編


私の本棚 89

      出版社:講談社現代新書

    「はじめに」に、次のように記されています。
    私たちは、間違った常識や先入観のもとで問題を思考し、答えを導き出してしまうことがある。そうだとしたら、時に答えを出すよりも、私たちが見えなかった・見てこなかった「日本の死角」とも言える論点や問いを掘り下げ、再考することが重要である。

    この本は、日本人論や若者の考え方、差別、いじめといった16のテーマごとに、議論の前提、当たり前となっている点について論じています。

戦国人物伝 石田三成 コミック版 日本の歴史(23) / 復権! 400年目の真実 別冊歴史読本44 石田三成 (別冊歴史読本 44)


私の本棚 88

      出版社:ポプラ社 / KADOKAWA

    ・戦国人物伝 石田三成 コミック版 日本の歴史(23)  ポプラ社
    ・復権! 400年目の真実 別冊歴史読本44 石田三成 (別冊歴史読本 44) KADOKAWA

    忠義の将と言われる石田三成。秀吉にその能力を認められ活躍をする。兵站に優れ、中国大返しや賤ヶ岳の合戦でも功績をあげる。太閤検地は、基準ががばらばらであった尺や枡を統一した三成によるところが大きい。

    規定を示すことによる公平性や、武力ではなく訴訟解決へと先鞭をつけるなど、「筋をとおす」政治であった。三成の「負」のイメージは徳川史観的によるものと考えた方がいい。

    ただ、その正義感や忠誠心が故に、打算の時代にあっては家康に敗れることにつながったのではないか。徳川幕藩体制は、三成が作り上げたシステムを受け継ぎ、その理想を具現化した政権であったとも言える。

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