私の本棚

清水ひろしが最近読んだ本をご紹介いたします。

『激安ニッポン』 谷本真由美 著


私の本棚 106

      出版社:マガジンハウス新書

    際立って低い成長率、30年間ほとんど伸びていない給与など、日本人は海外の人から見ると信じられないほど低賃金で働いていると指摘しています。そして、日本が世界と比較していかに「安い国」なのかを記しています。

    その結果、外国人による不動産売買や所有の禁止事項がほとんどないため、家も土地も買収されていること、サービスも質も高いのに激安で加入条件も緩いため、健康保険制度が海外から狙われていることに警鐘を鳴らしています。

    著者は、日本経済が落ち込んでいる要因に「非正規雇用」の増加や、非効率な仕事のあり方を挙げています。日本の現状を見つめ、他国の実態を知ることが必要だと述べています。

『救命センター「カルテの真実」』 /『 救命センター カンファレンス・ノート』 浜辺祐一 著 


私の本棚 105

      出版社:集英社

    著者は救命救急センターの医師。エッセイが小説仕立てになっていて読み進められる。「突発・不測」の事態に対応する救命救急医療で起きている高齢者搬送の増加、虐待事案、軽症者の救急車利用、リピーター患者。また、対応する医師たちの、患者のために行うべき治療なのか、患者の優先度といった葛藤など、事実をもとにした救命救急の現場に携わる関係者の大変さ、苦悩が伝わってきます。

『半暮刻』 月村了衛 著


私の本棚 104

      出版社:双葉社

    主人公は二人の青年。一人は児童養護施設で育った翔太、もう一人は一流大学に通う海斗。この二人が半ぐれの経営する店で知り合う。物語は、この店の摘発から一気に展開し、それぞれのその後の人生が描かれている。

    貧困の連鎖や過労死とその隠蔽、利権、裏金、裏社会といった闇を舞台とした社会派小説。一方、外国文学を読んだことによって過去と向きえるようになっていく翔太から、本のもつ力というものも示しています。

    余談ですが、舞台設定のなかで荒川区が登場します。

『ラグビー質的観戦入門』 廣瀬俊朗 著


私の本棚 102

      出版社:KADOKAWA/角川新書

    元日本代表キャプテンの日本ラグビー応援の一冊。試合の時間経過ごとの見方、各ポジションの役割、一つ一つのプレーの意味を解説しています。巻末にはラグビー用語の説明も。


    『ラグビー質的観戦入門』 廣瀬 俊朗 KADOKAWA/角川新書

『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』 中村淳彦 著


私の本棚 103

      出版社: 東洋経済新報社

    女子大生、精神疾患患者、シングルマザー、非正規労働者、パワハラ被害者・・・、当事者への取材をまとめたるルポタージュ。

    著者は取材を通じて、真っ暗な未来が見えてしまった、と述べています。そのうえで、社会が無理解のままではSOSがどこにも届かない可能性が高い。いつ誰が転落するかわからない社会である以上、貧困女子たちの声は誰にとっても他人事ではないはずであり、貧困を自分事として考え、貧困の罠が目の前に潜んでいることを知ることが必要だと訴えています。

『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』 平野 秀樹 著


私の本棚 101

      出版社:KADOKAWA/角川新書

    日本の国土は、やがて全て外国人・外国法人の所有になってしまうのではないか、と不安になります。
    世界の国々は法律によって外国人・外国法人に占有されない工夫がされているが、日本にはない、と記されています。

    再生可能エネルギー事業のためとして、土地を購入した中国系企業によって森林が伐採され、太陽光パネルが並べられていく国土の状況に、そして、知らないうちに日本列島が外国に様変わりし、私たちが外国人扱いされ、母国がなくなるかもしれないということに、政界だけでなく、未必の故意を日本人一人一人が改めてほしい、と著者は訴えています。

『災害とトイレ』 日本トイレ協会編


私の本棚 100

      出版社:柏書房

    日本トイレ協会が2020年に実施したアンケートでは、災害用トイレの備蓄は20%を下回っています。「災害が起きる=トイレに困る」ということがまだ認知されていない、と指摘しています。

    災害時のトイレに関する自助、国や自治体の対策等について記されています。

『京セラフィロソフィ』 稲盛和夫 著


私の本棚 99

      出版社:サンマーク出版

    稲盛和夫氏の経営哲学、人生哲学が記された一冊。著者はこの本を考え方、生き方の原点だと記しています。

    一貫していることは、「考え方」の大事さ。それが自分の人生、運命を決める、と述べています。だからこそ、完全を目指す、意識を集中する、努力をしようと心がける、自分を信じる、そういった「良い考え方」しなければならないと訴えています。

『「居場所がない」人たち』 荒川和久 著


私の本棚 98

      出版社:小学館新書

    孤独は生きていることの証でもあり、「なぜ孤独を感じるのか」と自分に「問う」行動に価値があると述べています。
    また、孤独が苦しいと感じる人には、孤独を抜本的に消し去るとは考えずに、孤独との向き合い方や付き合い方を変えるという視点を持ってほしい、とも記しています。

    コミュニティについても、これまでの「所属するコミュニティ=居場所」ではなく、「接続するコミュニティ=出場所」を構築していくことを勧めています。そのためには、リアルな接点もネットの世界も活用し、但し、それだけに依存するのではなく、たくさんの依存先と選択肢を多層化し、場合によってはすぐに「逃げ出せる」ことも必要だと訴えています。

『マンガでわかる 境界知能とグレーゾーンの子どもたち1~5』 宮口幸治著 佐々木昭后作画


私の本棚 97


出版社:扶桑社
宮口幸治氏は「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)の著者。

知的障害まではいかないものの、一定の支援が必要な「境界知能」に該当する人たちは人口の約14%いるとされています。勉強や運動、コミュニケーションが苦手、やる気がない、さぼっているという誤解を受けています。また、感情面や行動面で何らかしらの課題があるものの、原因や状態がわかりにくい「グレーゾーン」の人たち。

この子たちの出すサインは気づかれにくく、「厄介な子」「不真面目な子」として捉えられることも多々あるため、そういったサインを見逃さず、いかにキャッチして支援していくかを目的に、本書は執筆されています。

支援してあげたのだから期待に応えて当然、期待を裏切る奴は許せない、というのは支援者のエゴであり、頑張れない少年だからこそ、期待を裏切る少年だからこそ、逆に支援がいるのだと訴えています。

この漫画について著者は、自著「ケーキの切れない非行少年たち」(新潮新書)が正しく理解されていない声があることに文章の限界を感じ、漫画化により、明らかに文章よりわかりやすく、楽しく意図を的確に伝えてもらえていると述べ、教育系の一般書については「これから漫画が主流になるかもしれない」とも記しています。

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